文在寅大統領は、意外と「やる」

歴史的な南北首脳会談を明日に控え、平和宣言まで飛び出すかもしれないとのことで、この南北融和ムード、具体的な成果に達する可能性が大いに出てきた。

ちょっと前までの大方の論調としては、「こんなの北朝鮮に利用されるだけだから…」「ドタキャンになるんじゃないの」みたいのが多かったと思う。それも無理からぬことかもしれないが、私は金正恩氏のクレバーさに加えて、文在寅氏の、平昌オリンピックなどで見せた行動の大胆さに鑑みて、「これはもしかすると」と感じてはいた。

ネット民は「韓国の鳩山由紀夫」などと揶揄してたが、どうも私はオバマ氏に近いんじゃないかと思う。どちらも政治的ロマンチシズムが行動の源泉であろうが、オバマ氏には下積み時代に鍛え上げた政治力と、天性のパフォーマンス力があり、鳩山氏にはそれがない。

文氏はどうか。Wikipediaによれば、学生時代に民主化運動に加わり、投獄も経験し、釈放後強制的に軍務に就かせられるが、表彰を受けるほど優秀で、終には兵長となり除隊、その後はいわゆる人権派弁護士として多くの実績を積んだのち(オバマ氏もそうだった)、盧武鉉大統領の側近となり、2008年にようやく政界デビューを果たすのである。充分すぎる下積み時代である。

パフォーマンスに関しては、私は何度か氏の会見や演説をテレビで見ているが、清廉・精悍なルックスに加え、表情・発声もよく、場面によってはアドリブも軽妙にこなしていた。もっとも、その内容たるや、日本側の主張を真っ向から否定するものが多かったわけであるが、しかしそれは、韓国の左派からすれば、なかなかそこまで踏み込めないことを、よくぞ言ってくれた、ということなのだろう。それはそれで行動力ではある。

いわゆる慰安婦合意を反故にするとしているのも、そうだ。いくら公約だったとはいえそんな国際的な非常識をやってしまおうというわけなのだから。確かに当時、あんなもの上手くいくわけない、という日本の識者が、右にも左にもいたことは確かだが、冷静に考えれば、北朝鮮ならまだしも、国際社会の成員としてのプライドもあるであろう韓国が、国際的合意を正面切って反故にするというのは、いかにもアクロバティックな行動であるのだ。

「韓国の鳩山由紀夫」などとんでもない。相手を過小評価して小馬鹿にして悦に入るのは愚の骨頂である。文氏は手ごわい、意外と「やる」、と認識を新たにせずば、日本の正しい方策など打ちようもないであろう。

最後に加えて言うならば、南北融和が進行することは、日本にとっては基本的にデメリットの方が多い。南北統一などとなれば、強力な上にさらに大きな伸びしろを持つ隣国が誕生することになる。しかし、だからと言って、民族の統一という隣人の悲願を阻むような愚だけは犯してはなるまい。取り返しのつかない汚点が残るだけだ。

コメント

タイトルとURLをコピーしました