今回は希望の党の公約を見ていく。
- 消費税増税凍結
- 議員定数・議員報酬の削減
- ポスト・アベノミクスの経済政策
- 原発ゼロへ
- 雇用・教育・福祉の充実
- ダイバーシティ社会の実現
- 地域の活力と競争力の強化
- 憲法改正
- 危機管理の徹底
上に書き出したのは、公約各項の表題のみである。このほかに前文と、各項ごとの説明が入る。
ここで明らかにしたいのは、結党当時の希望の党の性格だから、各項を詳述することはしない。項をいくつかに分類して見ていきたい。
「消費税増税凍結」「ポスト・アベノミクスの経済政策」
公共部門と民間部門のバランスをどうするか?希望の党は、他党と比較して、最も政府を小さくしようとしているといっていい。実際、3項の説明にはこうある。
…起業を促進し、経済の自律的成長を目指します。
同時に、「民間でできることは民間で」の精神に基づき、政府系金融機関及び官民ファンドは可及的速やかに廃止します。
と、先鋭的ともいえるほどだ。小泉政権における「官から民へ」の流れで政府系金融機関は統廃合が進められたが、その完全版である。
尚、小池百合子氏は、この公約発表時の会見で、「これをこれまでのアベノミクスに代わりましてと申しましょうか、それに加えましてと言ったほうが正しいかもしれませんが」という風に、希望の党の経済政策を自評している。つまり、他の多くの野党のようにアベノミクスを否定したりはしていない。私はアベノミクスというのは、第一の矢・インフレターゲット、第二の矢・上げ潮財政出動は、あくまで一時的な補助ロケットで、第三の矢・規制緩和による健全な市場競争の環境創出こそ真の狙いだとするならば、なかなか結構な経済政策だと思うが、インフレターゲットと上げ潮が常態化してしまっているのが実情である。問題は、今のうちにさっさと規制緩和・構造改革ができるかどうかであろうから、その意味でこの公約の狙いは正しい。
「議員定数・議員報酬の削減」「地域の活力と競争力の強化」
7項は道州制導入による地方活性化である。つまり、2項と7項では、政府を身軽にしましょう、ということを言っている。これは、先述の「小さな政府」論が主に経済の面での言及であるのに対して、政治制度そのものに対する言及である。
7項の説明に、「道州レベルで、また世界レベルで競争するダイナミズムを創り出す。もちろん市町村間の競争も必要です。」とある。地方で業を営む者として、何かと競争を避ける地方のやりかたでは、否が応にもグローバリズムにさらされる現状に対応できるわけもなく、健全な競争の重要性は大変身に染みる。
「雇用・教育・福祉の充実」
少子化問題への対応である。実は、この項だけこの強力な新自由主義政党の公約としては異質で、「長時間労働を規制し」や「保育園・幼稚園の無料化と、返済不要の奨学金を増やします」「上限額以上の負担をしなくてよい『総合合算制度』を導入します」といった具合に、規制強化、税金投入を謳っている。
もちろん、必要な規制強化や税金投入は行うべきだと思うし、私なぞは自由競争促進のためにもかえってセーフティネットは強化するべきだとすら思っている。しかし、長時間労働問題については、新卒一括採用やら解雇規制やらを緩和して、雇用の流動化を図るという方法が知られているし、保育園・幼稚園の運用はそもそも国の仕事ではなく地方自治体に任せるべきで、奨学金も民間企業による人材への投資として行われるような流れをつけるとか、とにかく規制強化や税金投入によらない方法を示した方が、「らしさ」が出たと思う。
総合合算制度に至っては、ベーシックインカムに言及する絶好のチャンスでもあった(公約と同時に発表された政策集で言及されている)。
「憲法改正」「危機管理の徹底」
必ずしも9条のみの改憲を言っているわけでもなければ、他国からの脅威に対するだけの危機管理を言っているわけでもないが、しかしながら8項の説明の冒頭に「憲法9条をふくめ憲法改正論議をすすめます。」、9項の説明に「外交安全保障はもとより…(中略)…国民の生命と主権を守る万全の備えを整えます。」と記されているわけだから、やはり9条改憲に対する意欲の高さを示したといっていい。
まとめ
残りは「原発ゼロへ」と「ダイバーシティ社会の実現」となる。それぞれ簡単に評するが、「原発ゼロ」は他の野党や公明党までもが言っていることで、さして目を引くわけではない。可能な条件が揃うのなら、やればいいだけの話である。「ダイバーシティ社会の実現」は、綱領にあるもののシンプルな発展形であるから、ここで繰り返さない。
この公約は、綱領の性格をそのまま受け継ぎながらも、当時小池氏が「タブーに挑戦するぐらいの気持ちで思い切った案をこの公約に盛り込ませていただきました」と語っていたほど、それをさらに先鋭化した内容になっている。そして、まさにその「タブー」によって、希望の党は今に至る消滅への道を歩むことになったのだ。
次回はそのことを明らかとして、このシリーズの最後としたい。
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